母ーオモニー

母 ―オモニ―姜尚中先生は、私が胸の前に手を組んで「ステキ!」と言いたい(実際に言った事はない)数少ない男性のひとりです。あの物静かでやわらかい語り口調と、ときどき言葉が難しすぎて何を言っているのかわからないくらい、頭脳明晰なのに、低姿勢で控えめな感じが魅力的。笑顔もステキです。
恥ずかしい話なのですが、私が韓国と日本の間にある悲しい歴史について知ろうと思ったのは、韓国のドラマを見るようになってからでした。在日の人達にとって、自分のルーツが韓国にあることを明かすことは、今や一つの自己アピールになる時代だけれど、不運な時代に生まれ、自分の本当の名前さえ隠し、どうにもならない運命に翻弄されて、それでも明るく強く生きようとした人々が健気で本当に切ない。立派な大人に成長した息子に、こうして自分が生きた証を残してもらえることは、オモニにとっては、頑張って生き抜いた最後に待っていた、最高の親孝行だと思いました。姜先生の母への愛情が、ひしひしと伝わります。